日本を代表する芸術家・岡本太郎が1954年からアトリエ/居宅とし、1996年に84歳で没するまで過ごした場所、それが「岡本太郎記念館」です。”南青山の爆発空間”とも称されるこの記念館には、岡本太郎の息吹が感じられる、ワクワクするような雰囲気があふれています。
南青山の閑静な場所にひっそりと建つ岡本太郎記念館は、言ってみれば「岡本太郎さんのお宅」を訪問するようなもの。巨匠の住まいにお邪魔したうえに作品を間近で鑑賞させてもらえるなんて、こんな贅沢なひとときはなかなか味わえるものではありません。
今回はその訪問記。岡本太郎さん宅をちょっとだけ紹介します。
目次
門をくぐればそこはあきらかに岡本太郎ワールドだった
門を入ると右手に庭があり、正面に入口のドアがあります。岡本太郎ワールドは門をくぐった時からすでに始まっています。
草木が生い茂る中に見え隠れする様々なオブジェ。不思議なフォルムをした作品が並んでいるのが目に飛び込んできます。そして2階のバルコニーにからは、かの有名なアレが・・・。
楽しそうな庭なのですが、庭を鑑賞するのは中に入ってから。これはお宅訪問時のマナーですね。
中でチケットを購入して、靴を脱いでスリッパに履き替えます。脱いだ靴はビニール袋に入れて持って歩きます。
エントランスの左手はショップになっています。左手の壁にもいろいろなグッズが陳列されていて、目の毒です。魅力的なものがたくさんありすぎて、先へ進めません。
エントランスの正面中央には存在感のある像が立っています。よく見ると脚があります。
この作品の名は『縄文人』。日本の縄文土器に芸術性を見出した草分け的存在でもある岡本太郎が制作した彫像で、同様のものが川崎市岡本太郎美術館と、岩手県の藤沢文化交流センター前に設置されているとか。
とにかく順路を進みましょう。
本人が出迎えてくれる賑やかで温かなサロン
右手に入っていくと、この記念館でいうところの「サロン」というものがあります。岡本太郎がくつろいでいたリビングでしょうか。
サロンからは庭も見えます。このカオス感、ファンにはたまりません。
このサロンにいるだけで、岡本太郎の世界にどっぷり浸かれます。賑やかで色鮮やかで、どことなく温かな感じを受けます。
作品がぎっしり並べられている中に、岡本太郎本人が立っています。こういう雰囲気の中に立っていて、それが何の違和感もなく自然に見えるのが岡本太郎の凄さですね。
岡本太郎と、彼の秘書でのちに養女となった敏子さんの写真も並べられており、来場者を出迎えてくれます。
右手に見えるのは『太陽の塔』の小さいやつ。大きくても小さくてもかわいいですね、この像は。
足元にはカラフルでかわいい椅子があります。この椅子は『坐ることを拒否する椅子』。何かに向かって生き生きと取り組んでいる時には、坐り心地のいい椅子でくつろいでいてはダメ、という発想から生まれたとか。
未だエネルギーが息づくアトリエに驚愕!
サロンの先には岡本太郎のアトリエが、当時のままの状態で残されています。
万能な芸術家ならではの、ありとあらゆる道具が並べられている仕事机。その横にはゴルフバッグも見えます。
壁一面に収められている大量のキャンバス。上の方には書物や資料が押し込められた書棚も見えます。
白いオブジェは栃木県の新鹿沼駅前に立つ『夢の樹』の原型かな。中央の絵はその時々によって変わるようです。
手前の壁には愛用のピアノが。プロ級の腕前だったと伝えられています。床から天井から、ぎっしりと並んでいる作品たち。
創造意欲にあふれるこのアトリエには、岡本太郎の持つエネルギーが未だ残っている感じがします。
いつでも同じ作品が置かれているわけではないようです。この時に置かれていた作品の中には『喜び』の原型もありました。この作品は川崎市立藤崎小学校にあり、「リボンちゃん」の愛称で親しまれています。
2階も岡本ワールドが全開!
2階は主に特別展の展示スペースになっています。
私が訪問した日は「5億年後の生命体 河口洋一郎:beyond AI」が開催されていました。CGアーティストとして名高い東京大学名誉教授の河口洋一郎氏の展覧会です。
生命の誕生とエネルギーを題材としたアートは岡本太郎に通じる部分が多く、記念館が持つ岡本ワールドに見事に融合していました。岡本太郎作品の一部かと思ったほど。
2階から見る巨大なパネルもいい感じです。太郎さん、とっても楽しげです。
2階にも岡本太郎作品が展示されているのでお見逃しなく。今回は『生命の樹』のミニチュアが展示されていました。『生命の樹』と言えば、大阪万博のシンボル『太陽の塔』の内部に展開された壮大な作品。その原型ともいえる作品をじっくりと鑑賞できました。
カオスな庭は異次元空間
最後に庭を鑑賞します。庭に出ても再入場できますからご安心を。
庭の彫刻には案内板があります。でも全部見つけるのは結構大変です。
この庭は決して広い庭ではないのですが、見どころがいっぱい。バルコニーには『太陽の塔』が身を乗り出しています。
植物の生い茂る中に分け入って行きたい衝動に駆られます。小さな庭がまるでジャングルのように感じるから不思議。
真ん中に堂々と立っていたのは『若い太陽』。太陽は岡本太郎作品の定番ですが、微笑む太陽は珍しく、太郎自身を表しているとも言われています。
玄関横にある白くて大きいオブジェ『樹人』は存在感抜群。箱根彫刻の森美術館にもフォルムの異なる『樹人』があります。
とげとげの梵鐘『歓喜』は叩いて鳴らせます。本物は名古屋市北区の久国寺にあります。叩く場所によって音色が異なるとか・・・。
川崎市岡本太郎美術館に設置されている『母の塔』の原型です。川崎にあるものは高さ30m。こちらは近くでじっくり眺められます。
奥にあるオブジェ『めばえ』は設置プロジェクトが立ち消えになった幻の作品の原型。周囲には『坐ることを拒否する椅子』があるので、強引に座ってみては?
庭から室内を除くと太郎さんがいます。
おわりに
以上、南青山の岡本太郎記念館の紹介でした。いかがでしたか。
一般的には30分あれば全部見て回れると言われている「岡本太郎記念館」ですが、じっくり見て回ると1時間はかかります。
私はこの記念館を訪れて、岡本太郎さんという存在が身近になったような気がしました。より親しみを感じるようになり、岡本太郎作品をもっと見たくなりました。
岡本太郎作品が見られる施設は、この岡本太郎記念館以外に「川崎市岡本太郎美術館」があります。興味をそそられた方はぜひそちらも訪問してみてください。
岡本太郎記念館 | |
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開館時間 | 10:00~18:00(最終入館17:30) |
休館日 | 火曜日(祝日の場合は開館)、年末年始(12/28~1/4)及び保守点検日。 |
観覧料 | 一般 ¥620(¥520) 小学生 ¥310(¥210) ※( )内は15人以上の団体料金 |
割引チケット | 公式サイトにて100円OFFになる特別割引券が配布されています。 |
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