でっかいものを建ててしまうと維持にお金がかかります。それは全国どこにある建造物でも同じことで、北海道のシンボル「北海道百年記念塔」だけがそれを逃れることは出来ません。
北海道のシンボル「北海道百年記念塔」の解体が決まりました。もったいない・・・。実際に見に行って本当にそう思いました。というか、閉鎖前に行っておきたかったなあ。今はもう中には入れません。
今回思い切って見に行けてよかったと思う反面、実物を見てしまったからこそ感じる解体への無念。観光で訪れた私ですら、そう感じます。
見に行ってない人は今のうちにぜひ足を運んで欲しいモニュメントです。解体されたあとで「見とけばよかった~」と後悔するかも・・・。
現在の百年記念塔は下まですら行けない(残念無念)
老朽化による安全面の懸念から2014年を最後に閉鎖されている百年記念塔。以前は8階の展望室まで登れて、絶景スポットとして人気を博していたようです。今はゲートが設けられており、塔の下には近づけなくなっています。
たしかにサビサビです。金属片の落下もあるのだとか。
でも調べてみたらこの塔の表面はコルテン鋼という金属が使われていて、このコルテン鋼は無塗装で使用でき、錆自体が表面を保護し、内部に腐食が進行しにくい耐候性鋼(たいこうせいこう)だそうです。
だからこそ50年保ったのだともいえますが、100年経っても大丈夫なようにちゃんと考えられて設計されているのに。メンテナンス費用が出せずに解体と相成りました、というのは非常に残念な話です。
塔の下には佐藤忠良氏によるレリーフ作品『開拓』が設置されています。今は近づけないので間近で観賞することはできません。
百年記念に建造、百五十年記念に解体決定
北海道百年記念塔の高さは100m。北海道命名100年の節目となる1968年に着工されて1970年に竣工しました。25階まで階段があるそうで、8階の展望室まで登るのも階段。さぞかし根性を試される塔だったことでしょう。
公募によって選ばれた札幌市在住の井口健さんらのグループが設計したもので、「天をついて限りなく伸びる発展の勢い」をイメージしたものだとか。シンプルながら力強いフォルムは、神々しくさえあります。ちなみにこの公募で次点だったのは黒川紀章さんのデザインだったそうです。
てっぺんは空に向かってすっと伸びていて、左右の曲線は滑らかに大地と同化しています。他のどこにもない完成された美しい姿。しかも全長100mだけあって、間近で見ると本当に圧倒されます。
解体が決定したのは2018年で、ちょうど北海道命名150年の節目の年。解体しないで残して、展望台として使えるようにするとしたら、今後50年間の維持管理費を含めて28.6億円かかるとの試算が出されたとか。
道は4日、北海道100年にちなみ高さ100メートルで建立された道立野幌森林公園(札幌市厚別区)内にある北海道百年記念塔を解体する方針を固めました。https://t.co/eJEIfGhHYD pic.twitter.com/Wc2FhAUkfB
— 北海道新聞 (@doshinweb) 2018年9月4日
公費で28億なんて安いものなのに、と公言している政治家もいるようです。
解体跡地には新たなモニュメントも
道は跡地に新たなモニュメントを建設する予定とか。それに併せて周辺も整備されるそうです。
どのようなモニュメントになるのかは全く未定。また設計公募するのでしょうか。いずれにしても解体・新モニュメント建設はさまざまな方面に影響を与えそうです。
北海道百年記念塔は、札幌市厚別区と江別市を中心としたエリアの複数の小中学校で校歌や校章に使われているという話。無くなってしまった場合、ちょっと考えなきゃならないことも出てくるかも。新しいモニュメントが完成すれば、なおさらのこと。
江別市ではカントリーサイン(市町村境界識別)にも使われています。こちらはおそらく変更を余儀なくされるでしょう。
By Ozizo – Ozizo’s file, パブリック・ドメイン, Link
ポケモンGOのジムにもなっています。これはたいしたことではありませんが。
見に行く場合はヒグマに注意
観ていない人には特に、ぜひとも見に行って欲しい「北海道百年記念塔」なのですが、この塔がある野幌(のっぽろ)森林公園でははヒグマの目撃情報が相次ぎ、けっこうな緊急事態になっています。(2019年7月時点)
「早く捕まえたい」 #野幌森林公園 に #クマ 用のわな設置 #江別市https://t.co/devKCrWaFy
— NHK北海道 (@nhk_hokkaido) 2019年7月11日
百年記念塔を見に行くルートは、森林公園入り口の駐車場からまっすぐ進む正規コースと、北海道博物館の方から森を抜けていくコースがあります。博物館に寄ったついでに記念塔へ向かう場合、森を抜けるルートのほうが近いのですが、そちらの方が明らかに危険そう。
山登りと同じ感覚で歩いて、というようなアナウンスを公式が発表していました。私も声を出しながら歩きました。
おわりに
百年記念塔が50年で解体決定になるのは不甲斐ない気がしますが、自治体には財政的・政治的なことも含めていろいろと事情があるのかもしれません。
開拓百年を記念することそのものが、アイヌ先住民族への配慮という点でどうなのか、という議論はこれまでもたびたび行われてきたようです。開拓=侵略(?)という複雑な背景があって、150年の節目での解体決定が発表されたのかもしれません。
確かに、NHK放送のドラマ『永遠のニシパ』などを観ていると、アイヌ民族にとっては「北海道」になった記念など、記念でもなんでもないのかもしれないなあ、と思ってしまいます。
ただ、背景はどうあれ、現在建っている美しい塔の姿はいずれ姿を消す予定です。設計者たちが考え抜いて建てた巨大な塔の姿は、見られるうちに見ておいたほうがいい気がします。