深度合成という言葉を知っていますか?
あまり聞き慣れない言葉かもしれません。フォーカス・スタッキング(focus stacking)や焦点合成、多焦点合成、多重焦点とも呼ばれるこの手法は、ピント(焦点)を少しづつ変えて撮影した複数の写真をもとに、焦点が合っている部分だけを合成して一枚の写真にするものです。
本記事ではフリーソフトで手軽にできる深度合成について紹介します。ちょっとしたひと手間で一味違う写真ができるのでおすすめです。
深度合成の作例
深度合成をするとどんな写真になるかというと、
- マクロで撮った被写体全体にピントが合った拡大写真
- 手前にも奥にもピントが合っている風景写真
- 人物全員にピントが合っている集合写真
などが出来上がります。
言葉ではわかりにくので、作例を紹介します。
上の写真は手前の緑色の龍から奥の黒色の龍まで6体全てにピントが合っています。一眼レフで撮影した6枚の写真を深度合成しました。
手前の緑色の龍にピントを合わせて撮影した場合、普通は下のような写真になります。
深度合成写真は、手前から奥へ順にピントを合わせて撮影した複数枚の写真をアプリで合成して作ります。
手前から奥までくっきりとフォーカスしている写真は人目を惹きます。
植物は深度合成が難しい
深度合成にはブレが大敵。風で動いてしまう植物などは、きれいな合成写真にするのが難しい被写体です。
風がなければ手前と奥の花の両方にフォーカスの合った写真が撮れます。
フォーカスの範囲が狭くて苦労するマクロ写真。中央にピントを合わせると花びらがピンボケになりがちです。
4枚ほど撮って深度合成すれば、手前から奥までフォーカスの合った写真になります。
少しでも花が動くと、合成した時にブレてぼんやりした画像になります。植物の写真は無風の時を狙うか、風よけ対策をして撮影するようにしましょう。
アジサイのように奥行きのある植物を撮影する場合、深度合成は必須と言えるかもしれません。
手持ち撮影では難しい
深度合成には同じ画角で撮影した写真が必要です。手持ちでは難しいので、カメラを固定するか三脚を使う必要があります。
手持ちだと下の写真のように画像がブレてしまいます。
何かの上にカメラを置いて撮影する等の工夫が必要です。
資料的な写真には深度合成が最適
被写体によっては後方をわざとボカしたい時と、両方にピントを合わせたい時があると思います。
後方の馬や鳥居にもピントを合わせた写真は資料写真に向いています。
また、お土産品や小物などを大きく撮影したい時にも深度合成が役立ちます。
昆虫マクロがヤバい
昆虫のマクロ写真も深度合成がおすすめ。隅々までピントが合ったリアルな昆虫写真は迫力満点です。
深度合成はフリーソフト「CombineZP」で
今回の合成はWindows用のフリーソフト「CombineZP」で行いました。深度合成は「Adobe Photoshop CC」や「Affinity Photo」などの有料ソフトでも行うことができます。
なお、「フォーカスブラケット」機能を持つOLYMPUSの「OM-D E-M1」「OM-D E-M1 MarkⅡ」「OM-D E-M5 Mark II」「E-M10」「PEN-F」なら、一度の撮影でフォーカスをずらした複数枚の写真を撮ってくれます。
さらに「OM-D E-M1」「OM-D E-M1 MarkⅡ」にはフォーカスブラケットで撮影した複数枚の画像をカメラ内で深度合成する機能もあります。
NIKONにもD850、Z7、Z6などフォーカスシフト撮影ができる機種があります。
CANONのEOS RPにもフォーカスブラケット撮影という名称で同様の機能があります。