最近、巷ではオールドレンズが再び注目を集めています。中でも定番といえば、豊富な名玉が揃うM42マウント用レンズ。現代レンズにはない柔らかな描写やフレア、独特のボケ味は、いつもの風景を少し特別な一枚に変えてくれます。
ふつうの写真に少し飽きてきたら、旅のおともにオールドレンズを選んでみませんか。ゆっくりピントを合わせる時間も、きっと旅の思い出になります。
目次
- 1 M42マウント用レンズとは?
- 2 M42レンズが今も人気な理由
- 3 M42マウントのレンズはどんな人に向いている?
- 4 M42マウント 人気&安価なオールドレンズ 10選
- 4.1 1) Helios-44-2 58mm F2
- 4.2 2) Super-Takumar 55mm F1.8 (Asahi Pentax)
- 4.3 3) Pentacon Auto 50mm F1.8 MC
- 4.4 4) SMC Takumar 35mm F3.5
- 4.5 5) Meyer-Optik Domiplan 50mm F2.8
- 4.6 6) Fujinon 55mm F2.2
- 4.7 7) Industar-61 L/Z 50mm F2.8
- 4.8 8) Auto Chinon 50mm F1.7
- 4.9 9) MIR-1B 37mm F2.8
- 4.10 10) Carl Zeiss Jena Tessar 50mm f2.8
- 5 手持ちのミラーレス一眼に装着する際の注意点
- 6 オールドレンズと旅に出る
- 7 おわりに
M42マウント用レンズとは?
M42マウントは直径42mm、ピッチ1mmのスクリューマウント(ねじ込み式)のレンズ規格です。
機械式でシンプル(電子接点なし)、ねじ込むだけのつくりが奏功し、1950〜1970年代に世界中で普及。Pentax(Takumar)、Carl Zeiss Jena、Meyer-Optik、Helios など、名レンズが大量に作られました。
M42レンズが今も人気な理由
M42レンズが人気なのは、次のような理由からだと考えられます。
① オールドレンズらしい「味」が出やすい
- 柔らかい描写
- フレア・ゴーストが出やすい
- ぐるぐるボケ、シャボン玉ボケなど個性が強い
- 現代レンズでは出しにくい表現が簡単に得られる
- 同じ50mmでも「写りの個性」が全く違う
オールドレンズはフレアやゴーストが発生しやすいですが、それをあえて狙う手法もありです。またレンズ面の多少のくもりが逆に味わいにつながることもあります。
② 比較的「安価」で入手しやすい
- 生産数が非常に多い
- マウント規格が共通で流通量が多い
- 人気レンズでも数千円〜1万円台で楽しめるものが多い
ジャンク品の場合、1000円以下で販売していることもあります。状態次第では自分で分解掃除をする必要があるかもしれません。
③ ミラーレスとの相性が非常に良い
- フランジバックが長いためほぼ全てのミラーレス機で無限遠OK
- 安価なマウントアダプターが豊富
- Sony / Fuji / Nikon Z / Canon RF などで使用可能
ミラーレスは従来の一眼レフと違い、ミラーがない分だけフランジバック(マウント面からセンサーまでの距離)が短い構造になっています。そのためフランジバックが長いM42レンズ&アダプターと組み合わせた合計が最適な距離になり、レンズ本来の能力が生かしやすくなります。
④ ブランド・選択肢が圧倒的に多い
- 日本製:Asahi Pentax(Takumar)、Chinon / Cosina(Auto Chinon、Cosinon)
- ドイツ製:Carl Zeiss Jena、Meyer-Optik(旧東ドイツ) / Zeiss-Opton(旧西ドイツ)
- 旧ソ連製:KMZ / Valdai(Helios / Jupiter / Industar)
- アメリカ製:Kodak(Ektar)
- フランス製:Kern-Paillard(Switar)
オールドレンズの世界では「国産の安定感」「ドイツの設計思想」「ソ連のクセ玉」といったように、ブランドそのものがキャラクターとも言えます。
⑤ 機械式ならではの操作感
- 絞りリング・ピントリングが滑らか
- 金属鏡筒で所有感が高い
- 撮る行為そのものを楽しめる
電気に頼らない機械式のレンズを絞りやピントを手で操作し、金属の感触と確かな抵抗を味わいながら手間暇かけて撮るのがオールドレンズの醍醐味です。
M42マウントのレンズはどんな人に向いている?
M42マウントのレンズは、特に下記のような人におすすめです。
- オールドレンズを初めて使う人
- 表現重視・作品撮りをしたい人
- 低予算でレンズ沼を楽しみたい人
- ミラーレスでMF撮影が好きな人
M42マウントのオールドレンズは初心者でも始めやすい条件が揃っています。
世界的に普及した規格のためレンズの種類が非常に多く、描写に定評のある名玉も比較的安価に入手できます。
構造はシンプルな完全マニュアルで、絞りやピントの仕組みを理解しやすい点も魅力です。
さらにミラーレス一眼との相性が良く、安価なアダプターで無限遠まで問題なく使えます。失敗も含めて学びながら撮影を楽しめるため、オールドレンズ入門に最適といえます。
M42マウント 人気&安価なオールドレンズ 10選
以下はM42マウント用で人気が高く、なおかつ比較的安価に入手できるオールドレンズ10本のおすすめリストです。これらはミラーレス一眼にM42→各社マウントアダプターで装着して撮影するのが一般的です。
1) Helios-44-2 58mm F2
代名詞的M42標準レンズ。
とにかく有名なぐるぐるボケが特徴で、背景が渦巻くような幻想的な描写になる。ポートレートや開放付近での撮影で個性が出る。相場も安く、初心者向けの定番。
ヘリオスってGFXでもほぼ蹴られないの知ってました?一昨日気づいたw
Fujifilm GFX100SⅡ
Helios 44-2 58mm f2#fujifilm #XT5#fujifilmxt5#写真 #カメラ#PHOTOGRAPHY #オールドレンズ pic.twitter.com/2yqCcTugyx— おはよん (@ValeLawson) November 18, 2024
2) Super-Takumar 55mm F1.8 (Asahi Pentax)
安価で王道の標準レンズ。
暖かく柔らかい発色とクラシックなコントラスト。フィルム風の柔らかい雰囲気を持つ写真が撮れるので、日常スナップ〜ポートレートまで万能。市場に多い名玉。
Nikon Zf
PENTAX Super Takumar 55mm F1.8 初期型 pic.twitter.com/6uYn7Kd0Js— Oto (@sounds_g00d) October 17, 2024
3) Pentacon Auto 50mm F1.8 MC
ドイツ製だが比較的安価に見つかる標準レンズ。
コントラストがしっかりしていて、キレのある描写。逆光でのフレアも味があり、スナップに向く。M42での定番中の定番の一つ。
今日も昨日に続いて、オールドレンズの日です。#オールドレンズ #α7Ⅲ #PENTACON auto 50mm f1.8 MC pic.twitter.com/XdVSg2cdZs
— Kota (@Kota7M3K) March 5, 2023
4) SMC Takumar 35mm F3.5
M42では珍しい標準よりやや広角の一本。比較的安価で入手可能。
周辺まで比較的よく写り、風景やスナップで広がりのある画が撮れる。コンパクトで旅行でも便利。
雑草も絵になる
SIGMAfp
SMC TAKUMAR 35mm f3.5 pic.twitter.com/Wtw0HRKotH— よっしー3.5 (@jWUX4UUkPR2yaeJ) May 14, 2023
5) Meyer-Optik Domiplan 50mm F2.8
安価で入手しやすいM42標準。
絞りによりフレアや光の輪が出やすい、独特の柔らかさのある描写。光源入りの写真に特徴が出やすい。初めてのオールドレンズにもおすすめ。
Meyer-Optik Domiplan 50mm F2.8(ゼブラ)も大阪城笹の道で撮影☆、こっちはとにかくバブルボケがメイン☆、バブルが無いと意味が無いww、逆光で少し絞ると青いゴーストが出る☆、もうね、バブルの数が多すぎてww、強過ぎる光だとバブルにならないw、まぁ、木漏れ日あたりが良いのかもw pic.twitter.com/eAIi7KS0q0
— neko35mmF1.4L (@neko35mmf1) December 23, 2023
6) Fujinon 55mm F2.2
富士フイルム製のM42標準。
色再現が滑らかで、コントラストもバランスが良い。日常スナップで素直な写り。価格も比較的抑えめで人気。
FUJIFILM X-T3
FUJINON 55mm F2.2#fujinon55f22 pic.twitter.com/Eu7TA6fcWJ— Oto (@sounds_g00d) June 21, 2024
7) Industar-61 L/Z 50mm F2.8
ロシア製で星型ボケが出やすいタイプ。
絞り方次第で背景に星形のボケが出るユニークさ。アート系・夜景向きにも面白い。星型ボケが好きな人におすすめ。
Industar-61 L/Z 50mm f2.8
1989年製 pic.twitter.com/5HdWPRDMQK— M (@Russian_lens) July 4, 2025
8) Auto Chinon 50mm F1.7
日本の Chinon(チノン) ブランドから出ていた標準単焦点レンズ。
自然な遠近感と柔らかめのボケが好評で、スナップや日常の記録写真に最適。
AUTO CHINON 50mm F1.7
TAKUMARとは少し違う感じです。#オールドレンズ#FUJIFILM #AUTOCHINON #一眼カメラ#写真好きな人と繋がりたい pic.twitter.com/yNJ2rnZhkM— Lior D.TAKEI (@dtkei_camera) September 27, 2023
9) MIR-1B 37mm F2.8
ソ連(ロシア)時代のオールドレンズ。MIRは”ミール”と読む。やや個性的な描写とクラシックな風合いが楽しめる人気の一本。
色のりは自然で落ち着いたトーン。暗部の陰影が柔らかく、写真に映画的な雰囲気が出ることが多い。
おはよう
FUJIFILM X-T3
MIR MNP-1B 37mm F2.8#クラPHOTO #オールドレンズ pic.twitter.com/kA6AzJjRBa— クラッチ_C107②東8-Y18b (@KURAPHOTO1) May 15, 2024
10) Carl Zeiss Jena Tessar 50mm f2.8
古典的な光学設計によるシャープで素直な描写が魅力の標準レンズ。Jenaは冷戦の折に東西に分断されたCarl Zeissの東側。
コンパクトな鏡筒で扱いやすく、スナップやポートレート、風景まで幅広く対応。安価で入手しやすく、オールドレンズ入門にも最適。
戯れに梅の花を撮るなど。
Nikon Z6
Carl Zeiss Jena Tessar 50mm F2.8
1/80 F8.0 ISO500 撮って出し pic.twitter.com/Jm9MoARV2X— だいき()@如月雲雀 (@daiki890) March 17, 2024
手持ちのミラーレス一眼に装着する際の注意点
最近のミラーレス一眼カメラでM42マウント用レンズを使う場合、必要なものと注意点は下記のとおりです。
📷用意するもの
① M42→各社ミラーレス用マウントアダプター
必須アイテムです。カメラのマウントに合わせて選びます。
・Sony E 用
・Canon RF 用
・Nikon Z 用
・FUJIFILM X 用
・Lマウント 用 など
※電子接点なしのシンプルな金属アダプターでOKプラスチック製のものもあり
(AF・AEは使いません)
② M42レンズ本体
・Super-Takumar
・Helios
・MIR
・Pentacon など
※絞りピン付きレンズの場合は次項に注意
📷注意点(とても重要)
① 絞りピンの有無と対策
M42レンズには
・絞りオート/マニュアル切り替えスイッチ付き
・絞り切り替えスイッチ無し
があります。
レンズに「AUTO-MANUAL」の切り替えスイッチがあるものはマニュアルを選ぶだけで問題ないのですが、切り替えスイッチ無しのレンズでは「絞りピン押し込み機構付きアダプター」を用意する必要があります。
オート絞りの絞りピンとは、レンズ後端に付いている小さな金属ピンのことです。このピンは、
・押されていない状態 → 絞りは「開放」のまま
・押されると → 設定したF値まで絞られる
という仕組みになっています。
1960年代以降のレンズのうち9割ほどが絞りピンを持っているので、「絞りピン押し込み機構付きアダプター」の選択は必須と言えます。
なお、アダプターを使うことにより焦点距離がのびることは把握しておきましょう。たとえばK&F Conceptのアダプターを装着した時の焦点距離は、Canon では 1.6 倍、Nikon および Sony では 1.5 倍に変化します。
② すべてマニュアル操作
M42レンズ使用時は
- オートフォーカス ❌
- 絞り制御 ❌
- EXIF記録(焦点距離・F値)❌
です。
- MF(マニュアルフォーカス)
- 絞りはレンズ側で調整
になります。
③ ピント合わせのコツ
ミラーレスは非常に相性が良いです。
おすすめ設定:
フォーカスピーキング ON
拡大表示(MFアシスト)ON
→ 開放F1.4やF2でもピント合わせがしやすくなります。
④ 露出モード
基本は以下がおすすめ:
- A(絞り優先AE)※
- M(マニュアル)
※レンズ側で絞りを変えると、カメラが自動 or 手動でシャッターを調整
⑤ APS-Cかフルサイズか
APS-C機:
→ 画角が約1.5倍(50mm → 約75mm相当)
フルサイズ機:
→ 本来の画角で楽しめる
撮りたい用途で選ぶのが◎です。
⑥ レンズの個体差・状態
オールドレンズ特有の注意点は主に次の点です。
- カビ・クモリ
- 絞り羽根の油染み
- ヘリコイドの重さ
購入時は状態チェックが重要になります。
オールドレンズと旅に出る
オールドレンズと旅に出ると、写真の時間がゆっくり感じられるという人が多いようです。ピントを合わせ、絞りを選ぶ一手間が風景との距離を縮めてくれるような感覚。偶然生まれるフレアやボケも旅の記憶となり、一枚一枚が特別な思い出になります。
旅行に現代レンズとオールドを一本ずつ持っていって、好きな景色が撮れたなって思うのがほとんど全部がオールドで撮った写真だった
柔らかくて不鮮明な描写に惹かれるのはどうしてだろう
— BIS🍀 (@Bismuth833) August 26, 2025
念願京都一人旅のお供に50年前のオールドレンズ持ってきたけど最高にいい(*^^*)持ってきて正解だった(*^^*)毎回遠征の時旅行したい(*^^*) pic.twitter.com/wBHG7brhpl
— M!KA🐌Bustercall聞いて灰になりたい (@04ls2008yon) January 28, 2023
念願京都一人旅のお供に50年前のオールドレンズ持ってきたけど最高にいい(*^^*)持ってきて正解だった(*^^*)毎回遠征の時旅行したい(*^^*) pic.twitter.com/wBHG7brhpl
— M!KA🐌Bustercall聞いて灰になりたい (@04ls2008yon) January 28, 2023
オールドレンズ片手にアレンデール王国散策してきた。 pic.twitter.com/0sOp2Xpzq9
— がじゅまる (@gajumaru_dph) June 7, 2024
おわりに
M42マウントのオールドレンズは、写真を「結果」だけでなく「過程」まで楽しませてくれる道具です。ピントや絞りを自分の手で操作する時間は、被写体と向き合う余白を生み、シャッターを切る一瞬をより特別なものにしてくれます。
柔らかな描写や偶然生まれるフレアも、デジタル時代では貴重な表現だといえます。現代のミラーレスと組み合わせることで、古き良きレンズは時代を超えて今も新鮮な感動を与えてくれるでしょう。




